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プロジェクト紹介

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太陽電池・環境自然エネルギー寄附講座 

寄付者 富士電機システムズ株式会社
講座開設期間 平成18年度~22年度

図1 世界の太陽電池生産量の推移

 昨今,化石燃料の枯渇化や地球温暖化など,エネルギー・環境問題が顕在化してきております.皆様方もよくご承知のように,1997年に日本が議長国をつとめた「地球温暖化防止国際会議」において法的拘束力のある「京都議定書」が採択され,先進諸国は温室効果の主因である二酸化炭素の排出削減を義務付けられた.無尽蔵に存在する太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電は,環境にやさしいクリーンなエネルギーとして期待と重要性がますます高まってきている.ちなみに,1時間のうちに地球上にふりそそぐ太陽エネルギーの量は地球上で消費されている総エネルギーの1年分に相当するといわれている. 1973年の第一次オイルショックを契機に本格的に始まった太陽光発電技術の開発はこれまで着実に成果を上げ,2005年の全世界における年間生産量は 1.7GWに達している.日本はその内の約50%以上を生産する世界一の生産国であるが,まだまだ主要なエネルギー源となるまでには至っていない.新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が策定した太陽光発電ロードマップ・ PV2030ででは,2030年までに全発電量の10%程度となる100GWの達成が目標とされており,家庭用電力の50%を太陽光発電でまかなうことが想定されております.

図2 多結晶シリコン太陽電池基板

 太陽電池は使用する材料の種類によって,結晶シリコン太陽電池,アモルファスシリコン太陽電池ならびに化合物半導体太陽電池に大別されるが,現在,結晶シリコン太陽電池は全生産量の90%以上を占めており,その内の約50%が多結晶シリコン太陽電池である.多結晶とは,結晶方位の異なる多数の単結晶が集合化したもので,多結晶を構成しているそれぞれの単結晶を結晶粒,それらの境界を結晶粒界(または,粒界)とよぶ.光-電気エネルギー変換効率を研究レベルで比較すると,単結晶シリコン太陽電池では約24%が達成されているのに対し,多結晶シリコン太陽電池では約19%と,変換効率の面では多結晶シリコン太陽電池は単結晶シリコン太陽電池に劣る.しかし,多結晶シリコン太陽電池は生産コストの面で優れており,また大規模生産に適していることから,太陽光発電を広く普及させ利用拡大を図るためには,多結晶シリコン太陽電池の開発が不可欠の状況にある.今後,持続的な発展を続けて目標を達成するためには,多結晶シリコン太陽電池の変換効率の向上と低コスト化に向けた製造技術開発が重要な課題となっている.

図3 シリコン粒界の原子スケール透過電子顕微鏡像

 太陽電池の研究には,主に,太陽電池のセルを構成する材料側からのアプローチと,システム側からのアプローチがあるが,本講座では,材料科学的アプローチによる太陽電池の変換効率の向上に関する研究を行っている.太陽電池のエネルギー変換過程においてはいくつかのエネルギー損失要因があり,変換効率低下の原因となっている.そのうち,材料に起因する要因として,「バルク再結合損失」と「直列抵抗損失」とよばれる現象がある.太陽光が結晶表面に照射されると,光エネルギーによりマイナスの電荷をもつ電子とプラスの電荷をもつ正孔が生まれる(光励起).p型シリコンを用いた太陽電池では,表面層のみをn型層にすることによってp-n接合を形成する.光励起で生まれた電子・正孔対はp-n接合による内部電界により互いに逆方向に移動し両端の電極間に光起電力が生じる.このとき,多結晶シリコン太陽電池においては,多結晶中に必然的に含まれる多数の結晶粒界が,電子と正孔が再び結合してキャリアが失われる「バルク再結合損失」の優先的な場所として作用してしまう.さらに結晶粒界は,ポテンシャル障壁を形成しキャリアが流れる際の抵抗となる結果,電気エネルギーがジュール熱として失われてしまうという問題も生じる(直列抵抗損失).多結晶シリコン太陽電池の変換効率が単結晶シリコン太陽電池に比べ低い理由の主な原因がこれらの損失過程にある.

 ところで,結晶粒界は方位の異なる2つの結晶粒の境界であり,幾何学的な相対方位関係により結晶粒界の性格(構造)は多様に変化する.これまでの基礎的な研究により,結晶粒界には個性があり,それらのさまざまな力学特性や機能特性は粒界の性格・構造に著しく依存することが明らかにされてきた.したがって,多結晶シリコン中に存在する全ての結晶粒界が等しく上述したような変換効率低下の原因になるとは限らない.多結晶シリコン太陽電池の変換効率の向上のためには,粒界性格・構造と粒界の電気的特性との関連を調べ,粒界における再結合損失および直列抵抗損失の原因を物理的観点から明らかにすることが重要である.さらに,それらの知見に基づいた結晶粒界の設計・制御による多結晶シリコン基板の微細組織の最適化が不可欠であり,最適微細組織の導入のための結晶成長プロセス技術の開発も重要な課題であると思われる.

 本講座では,多結晶シリコン太陽電池の変換効率向上のための微細組織設計・制御の指針を示すことを目的として,最新の電子顕微鏡をはじめ,最先端の研究機器を用いてこれらの研究を展開している.

 最後に,本寄附講座は,熊本県南関町において昨年からアモルファス太陽電池の生産を開始した富士電機システムズ(株)の寄附金により設置された新しい講座である.熊本県は,「循環と共生を基調とする社会‐環境立県くまもと」の実現を目標に,ソーラー産業の振興を戦略的に進めており,本寄附講座では,太陽光発電に関わる教育・研究の一翼を担い,この分野の人材を育成するとともに,太陽光発電研究の拠点となることを目標として,少数精鋭で精力的に活動しています.