研究内容

研究内容

地球温暖化現象に代表される環境問題は私たちの身近な危機迫る問題になりつつあります。材料工学を志す私たち熊本大学工学部材料・応用化学科環境調和材料学講座河村研究室では、自動車や鉄道車両、航空機、船舶といった輸送機器に欠かせない金属材料を軽量化することで、省エネルギー化、環境調和を図ろうと考えています。マグネシウム合金は、鉄の1/4、アルミニウムの2/3の密度であり、実用金属中で最軽量です。しかしながら、マグネシウム合金は、低い強度、低い耐食性、低い発火温度といった克服すべき課題が存在し、本研究室では、それらの課題を克服するマグネシウム合金の研究・開発を行なっています。

研究紹介

私たちは「高強度で錆びない不燃性マグネシウム合金」の開発を目指して研究を行い、長周期積層構造(LPSO)相型マグネシウム合金とC36型不燃性マグネシウム合金の2つの新しい合金の開発に成功しました。

LPSO型マグネシウム合金

長周期積層構造(LPSO)相という新奇の相を有するマグネシウム合金は、優れた強度を示します。これは、LPSO相がキンク変形をと呼ばれる特殊な変形をするためと考えられています。このLPSO相は、熱的に安定しているため耐熱性を示します。右の写真は、LPSO型Mg合金押出材の組織です。黒いコントラストの領域がα-Mg相であり、白いコントラストの領域がLPSO相を示します。また合金元素の希土類元素が表面に酸素遮断能を有する酸化皮膜を形成するため、高い難燃性を発現します。

C36型不燃性マグネシウム合金

C36構造の金属間化合物を有する不燃マグネシウム合金の研究を行なっています。この合金は、①押出加工を施すことでC36化合物が微細に分散するため高強度、②優れた耐食性、③Ca添加によって純マグネシウムの沸点と同等以上の発火温度、④優れた熱伝導特性を示すことが明らかになっています。右は、C36型不燃性マグネシウム合金を大気中でバーナーを用いて加熱した様子の写真です。写真右下の温度は、合金内に設置している熱電対で測定したC36型不燃性マグネシウム合金の温度です。一般的なマグネシウム合金は、溶解が始まると容易に発火してしまいますが、C36型不燃性マグネシウム合金は燃えずに溶解しています。そして、C36型不燃性マグネシウム合金の温度が1000℃を超えても、赤熱するだけで、マグネシウム特有の白い光を発する燃焼は発生しません。